1. 感情辞典
人の感情は様々です。
喜びや怒りなどの感情はもちろん、
罪悪感や嫉妬、シャーデンフロイデ(他人の不幸は蜜の味)など、
人特有の感情もあります。
前回の記事では、
感情を理解・利用する感情マネージメントについて、
筆者であるとり天が学んだことを説明しました。
主に
・感情マネージメントとは、マインドフルネスはとても密接な関係
・感情による心理的、身体的な反応に関する科学的理解
・感情の持つ生理的、社会的昨日に関する科学的理解
・科学者の考える感情の階層性
など、感情マネージメントとは何か?感情とは何か?について説明しています。
上記の知識に加えて
感情マネージメントを実践するためには、
そもそもどのような感情があるのかを知る必要があります。
私が調べたことをまとめています。
- どのような時に感情を覚えるのか?
- 身体にはどのような変化が起きるのか?
- どのようなメリット・デメリットがあるのか?
様々な感情を説明するにあたって、
羅列するよりも何かしらの分類を使った方が体系的な理解ができると考えたため、
当記事ではポールエクマンが提唱した
・基本情動(=文化、性別、人種に関係なく生まれながらに備わっている感情)
・高次認知情動(人間の社会性特有の感情。基本情動よりも多くの情報処理が必要)
という2つの分類ごとに感情を説明していくことにしました。
※情動とは、比較的短い期間で感じる感情のことであり、
当記事では感情と同義で使っています。
また、
基本的に私たちがポジティブな感情に振り回されることは少ないため、
ネガティブな感情の説明がほとんどです。
1.1.基本情動
基本情動は生物の本能に基づいた感情であり、
多くの基本情動は自然環境の中で生存に有利になるように働きます。
基本情動は、
人間が自然の中で生活していた時代には有利だったかもしれませんが、
現在の社会では不利に働く場合もあります。
ただ、
感情の変化は集中力や判断力に影響を与えるため、
感情の特徴を理解し利用することで適切な行動を選択できるようになるでしょう。
- 喜び
- 嫌悪
- 怒り
- 恐れ/不安
- 悲痛(悲しみ)
喜び
・美味しいものを食べた時
・人に感謝された時
・試合に勝った時
良いことが起こった際に覚える感情が喜びです。
また、
ふとした瞬間に感じる「(今)幸せだな」と言った爽やかな、
清々しいような感情も喜びの一種だと考えられます。
喜びの感情は、
・人に創造性を発揮させ
・何か新しいことに挑戦したい気持ちが湧く
などのメリットがあります。
喜びを感じている際には
想像が掻き立てられ決定が速くなってしまうため、
勢いで判断を下さないよう注意が必要です。
嫌悪
・汚いものを見た時
・不誠実な行いを見た時(歩きタバコや電車内でのマナー違反など)
に覚えるネガティブな感情です。
対象を不愉快に感じ、自身から遠ざけようという働きを持ちます。
対象から距離を取ろうとするのは、
・病気への感染を防ぐなどの衛生面
・物理的、精神的、社会的な危機を回避するなどの安全面
の観点からであり、現在の社会でも大いに役立つと言えます。
強い嫌悪はストレスとなり、
暴力的な言動を引き起こす場合もあるため、
嫌悪を感じた際には適切に処理することが求められます。
怒り
・人にぶつかられた時
・嘘をつかれた時
・悪口を言われた時
自分や自分の大切にしているものを傷付けられた際に感じるのが怒りです。
怒りを感じる際には、
・交感神経が刺激される
・血圧が上昇し心拍数が上がるため
体が活動に適した状態になります。
そのため、
怒りは人を突き動かす力を与え、
課題や企画に取り組むと高い集中を発揮することができます。
目の前のことだけに集中してしまうため、
判断を必要とするような行為は避けるべきです。
恐れ/不安
・目の前に何かが飛び出してきた時(恐れ)
・将来の先行きが見えない時(不安)
・大事な会議の前日で眠れない時(不安)
近い未来に何か良くないことが起きることを感じた際には恐れを感じ、
何かを失うことや将来に何か良くないことがあると考えると不安を感じるものです。
恐れや不安は怒りに似ており、
身近な危機に対して対応する準備を整えます。
また不安は将来に対する準備を促します。
嫌悪や怒り同様、強い恐れや不安はストレスになるため、
これらの感情を利用できないと判断する場合には、
解消するなどの対策が必要です。
悲痛(悲しみ)
・引っ越しで友達と離れ離れになった時
・大切なペットや誰かが亡くなった時
悲痛(悲しみ)は心が痛み、辛くて泣きたいような感情です。
悲しみは、
細部に関する関心を持たせ注意力を高めてくれるため、
冷静な意思決定に役立ちます。
ただ、行動する気力は落ちてしまうため、
新しいことにチャレンジするよりは判断力を活かして、
現在の取り組みの見直しなどをするとよいでしょう。
1.2. 高次認知的情動
高次認知的情動は、
社会生活の中で身につけ、機能する感情になります。
これ以降に説明する高次認知的情動は社会生活上、
- 軋轢(あつれき)を回避したり
- 人間関係を良好にする
ために人類が進化の過程で発達させた感情だと言えます。
羞恥心
羞恥心は
人々の前で自分の欠点や弱点を見せてしまい、
周囲に劣った人間だと評価されるというあなたの考えから生じます。
こうありたいと思う自分の理想像と、
実際に露呈した自分の実像とのギャップにより生じるのです。
理想の自分に気付くことができるメリットを持ちますが、
素直に向き合うことが難しい感情でもあります
羞恥心を感じると周囲の注目から逃げたいと考えるため、
・人と目を合わせない
・下を向く
など周囲の視線を感じないようにします。
ただ実際には、
動揺が強くなり周囲の視線を敏感に感じてしまうことにも繋がります。
羞恥心を感じることに対して、
自分が上手く問題やストレスに対処できていないという思いを生み
「自分はダメな人間だと」自責の感情につながる可能性もあります。
扱いが難しく、
早めに向き合い克服することが必要な感情の1つ言えるでしょう
罪悪感
罪悪感は、
・自分自身の行動や考えに対して生じる場合(道徳的侵害)と
・行動の結果が悪影響を及ぼした際に生じる場合(道徳的過失)
が存在します。
・道徳的侵害:あなた自身の行動をめぐって感じる
⏩ 例:ダイエット中に間食する。良くない考えが浮かぶ
・道徳的過失:あなたの行動が他人を傷つけたり与えたりした時に起こります。
⏩ 例:約束を破った事で友達に迷惑をかけてしまった
罪悪感のメリットは
自分の行動や考えを振り返り、あらためることができることです。
罪悪感を感じることで
・自分の欠点に気付き直そうと考えたり、
・人に迷惑をかけてしまう言動を控えたり
することができます。
しかし、
強い罪悪感を抱いてしまうと、
・相手に過剰な償いをしたり
・何らかの罰を受けても仕方ないと考えたり
・自分で自分を罰したり
などの自虐的な言動を起こす可能性があります。
屈辱感
屈辱感は不当に自分が
・貶められた(おとしめられた)
・嘲笑われた(あざわられた)
と認識した時に強く感じる感情です。
自己防衛的であり傷付きやすいという点では羞恥心と類似しています。
しかし、
屈辱感は他者に焦点を当てる感情であり、
強い不公平感や強い復讐心が見られます。
そのため
適切な屈辱感:不当を正したいという正義感を生み出す
強すぎる屈辱感:気持ちを晴らすために相手への復讐心を生み出す
ことにも繋がります。
羨望(せんぼう)/嫉妬(しっと)
羨望(せんぼう)と嫉妬(しっと)は似ていますが意味合いが異なります。
いずれの感情も他者に対する憧れを持つ気持ちであり、
自身の欲しいものを気付かせてくれる感情です。
しかし、登場する人間関係に違いがあります。
羨望(せんぼう)
2者間における感情 のことです。
Aさんが、
Bさんの能力や容姿が自分のそれより優れていると感じ望む感情のことです。
自身の欲しいものを気付かせてくれるため、
欲しいもののために努力する活力を生み出すメリットがあります
しかし、
・手に入らないものを望む気持ちや
・Bさんに対して暴力的な恨み
を持つことにもつながる危険性を持っています。
嫉妬(しっと)
3者間における感情のことです。
AさんがCさんに好意を持っていて
BさんとCさんの親密さなどがAさんにとって不快な場合に生じる感情になります。
その結果AさんはBさんに対して
・怒りを感じたり、
・不安や抑うつ的な感情を持つこと
が嫉妬になります。
嫉妬の結果
AさんがCさんとの関係を深めたり護ったりすることに力を割くようになり、
・Cさんと関係が良好になる
・(異性間であれば)子孫繁栄に役立つ
などのメリットがあります。
過度な嫉妬感情は
BさんやCさんに対する強い暴力性を生み
害を及ぼす結果にもつながるため
注意して扱う必要のある感情だと言えます。
参考にした本
終わりに
いかがだったでしょうか。
感情を理解することで
みなさんが抱えている感情と向き合うこときっかけになったのであればとても嬉しいです。
感情を理解することは、
自分自身を理解することにも繋がりますし、
ストレスとの向き合い方や不安との付き合い方を改善してくれる一助になるでしょう。
より理解を深めたいと考えている方は
ぜひ関連する記事も読んでみてください。
問い合わせでの相談もお待ちしています。
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