1. 感情の支配から自由になる3つの要素
- 感情の原因を探る(ABC分析)
- 不健康な感情の理解と解消方法
- 感情マネージメント(ABCのその先 DとE)
1.1. 感情の原因を探る(ABC分析)
- 雨が降っているから気分が沈む
- 明日のプレゼンテーションが気になって不安になる
- 思い通りに作業が進まないせいでイライラしてしまう
それぞれ日常で抱く感情です。
では、これらの感情の原因は何でしょうか。
「雨が降っていること」
「明日プレゼンテーションをすること」
「作業が思い通りに進まないこと」
外的出来事や他人が感情の原因だと考えるでしょう。
このように、
感情の原因は外部にあると考えるのが一般的です。
そんなときに有効なのがABC分析です。
ABC分析は、
感情を生み出す原因を分析・特定するための手法です。
「雨が降っているから気分が沈む」を例にこのABC分析を実践してみましょう。
- A(Activating events:きっかけとなる出来事):雨が降っている
- B(Beliefs of thoughts:信念や思考):雨が降ると傘を持つのが面倒だ/雨の日は寒いから嫌だ
- C(emotional and behavioral Consequence:結果(感情、行動)):気分が沈む、憂鬱になる
一般的な考え方では
A(=雨が降っているという出来事)が、
C(=気分が沈むという感情)を引き起こしたと考えてしまいます。
しかし、
実際には雨が降ったとしても
憂鬱になる人もいれば、怒りを覚える人もいれば、何も感じない人もいるでしょう。
Consequence:結果(感情、行動)を理解するには、 Activating events:きっかけとなる出来事ではなくB(Beliefs of thoughts:信念や思考)に注目する必要があるのです。
つまり、
出来事があなたに感情を強いているわけではなく、
私たちが思考するように私たちは感じてしまっているのです。
ABC分析を有効に使うためには、ネガティブな感情に気付くことが重要です
出来事:雨 ⏩ 感情:気分の落ち込み
出来事:プレゼンテーション ⏩ 感情:不安
というように無意識のうちに感情が芽生えます。
これらの自動思考をなくしていくためには、
自動思考で芽生えるネガティブで不健康な感情を感じた時にABC分析を行う必要があります。
では、ネガティブな感情とはどのようなものがあるでしょうか?
1.2. 不健康な感情の理解と解消方法
- 不安
- 抑うつ
- 怒り
- 羞恥心
- 罪悪感
- 羨望(せんぼう)/嫉妬(しっと)
不安
何かを失うことや将来に何かあると考え、
落ち着かなくなる際に不安を感じるます。
「もし〜したらどうなるだろうか?」というネガティブな考え方が不安の考え方です。
・「もし失敗したらどうしよう」
・「もしバカにされたどうしよう」
不安な思考を解消するために
・不安の対象を遠ざけるか
・避けるか
で不安を一時的に和らげることはできるでしょう。
しかし、
不安な気持ちは自分自身から湧き上がるので、
その場をやり過ごせても似たような場面で再発する可能性があります。
前回対処できたという感覚がないと、
次こそは良くないことがあるとより強く不安を感じてしまいます。
そのため、
遠ざけたり、逃げたりすると長期的に見ると不安を強めてしまうこともあります。
不安に強くなるためには、
将来感じていることに対処できるという実感を得ることが重要になります。
不安の解消には
「もし〜したらどうなるだろうか?」の後に
「だとするとどうだろうか?」を加えてあげると不安に対する気持ちに対処できます。
例えば、
「もし失敗したらどうしよう?」であれば
「失敗したらどうなるだろうか?」と付け加えて考えてあげるのです。
「失敗したらどうなるだろうか?」の不安に
「失敗することはあるかもしれないが、
失敗を素直に認めて謝るか、次は失敗しないように反省点を見つけよう」
と前を向いた考え方ができるようになります。
「バカにされたらどうなるだろうか」であれば、
「特定の人にバカにされることはあるけど、全員がそうではない。
聞きやすそうであればどうしてそう思うのか聞いても良いかも」
と考えられるようになります。
このように
「だとするとどうだろうか?」と考えると
不安になる考えを繰り返す思考から
「問題解決思考」に変化するため不安と向き合うことができるようになるのです。
抑うつ
何かを喪失した時におこります。
抑うつになると、自信の低下も起こります。
また、
抑うつになることで何かに参加する気持ちも削がれてしまうため、孤立し症状を強めてしまう傾向があります。
抑うつを引き起こす際には、その前触れとして3つの原因があります。
- 自己卑下:自分の失敗やつまづきを理由に自分を責めてしまうこと。 自分を責め続ける限り、自分の欠点を直して行動を改善することはできない。
- 自己憐憫:自分の不幸を自ら憐れむこと
- 他者憐憫:他人の苦痛に同情する。実際の行動に移せればよいですが、思いばかりが先行する場合には良くないです。
抑うつの状態は無力感から抜け出すことが求められます。
では、やる気をどう起こしていくのかが次の課題になります。
やる気は行動から起こるものです。
習慣的に行動をとることで気分もよくなり、元気も取り戻せます。
無理にでも何か行動を起こすことで 次第にやる気を高め無力感から抜け出すことができるようになります。
もちろん
抑うつ状態の時に行動を起こすのは大変です。
私の場合には、
・睡眠を良くとる
・縫い物をする
・本を読む
・抑うつや心理学について学ぶ
といった行動を取るうちに自分自身を客観的に観れるようになり、
徐々に行動を起こすことができるようになり復職することができました。
怒り
自分や自分の大切にしているものを傷付けられた際に感じるのが怒りです。
・あなたの目的が達成できない場合
・大切なルールが破られた場合
・自尊心を傷付けられた場合
など怒りを感じてしまうことがあります。
怒りを感じた場合に、攻撃的な行動・思考をする人がいます。
このような人は怒りを外に表すことが怒りの解消には最善だと考えているかもしれません。
しかし、
怒りを外に表すことでB(Beliefs of thoughts:信念や思考)が強まるため、
長期的には怒りをより強めていくことになります。
長期的に怒りの発生を抑えるためには、
B(Beliefs of thoughts:信念や思考)を変えることが求められます。
B(Beliefs of thoughts:信念や思考)を変えるためには、 まずは「他人が自分を怒らせる」という考えを捨てることです。
「他人が自分を怒らせる」という考えを捨てることで怒りに対する分析を冷静に行えるようになります。
怒りの分析により状況が自分を怒らせているわけではなく、 状況に対して自分が怒りを覚えてしまう考え方をしていることに気付き、思考の修正の一助になります。
羞恥心
羞恥心は
人々の前で自分の欠点や弱点を見せてしまい
周囲に劣った人間だと評価されるというあなたの考えから生じます。
こうありたいと言う自分の理想像と、
実際に露呈した自分の実像とのギャップにより生じるのです。
羞恥心を感じると周囲の注目から逃げたいと考えるため、
・人と目を合わせない
・下を向く
など周囲の視線を感じないようにします。
これらの行動は
実際には動揺が強くなり周囲の視線を感じてしまうこともあります。
また、羞恥心を感じることに対して、
自分が上手く問題やストレスに対処できていないという思いを生み
「自分はダメな人間だと」自責の感情につながる可能性もあります。
羞恥心を生み出す思考を変えるための手法として 羞恥心粉砕法があります。
羞恥心粉砕法とは、
わざと人前で恥ずかしい行動を取る
という荒技です。(東京駅の目の前で「東京駅はどこですか」と尋ねるなどです)
この方法では
他人が自分を笑ったり非難したとしても何も起きないことを学ぶことができます。
羞恥心の原因が
他人から笑われることや非難されることではなく
他人から笑われることや非難されることにあなたがどのような意味をつけるかなのです。
罪悪感
罪悪感は
自分自身の行動や考えに対して生じる場合(道徳的侵害)と
行動の結果が悪影響を及ぼした際に生じる場合(道徳的過失)が存在します。
- 道徳的侵害::あなた自身の行動をめぐって感じる(ダイエットできない。よくない考えが浮かぶ)
- 道徳的過失:あなたの行動が他人を傷つけたり与えたりした時に起こります。
(約束を破った事で友達に迷惑をかけてしまった)
罪悪感を感じると、
・相手に償いをしたり
・何らかの罰を受けても仕方ないと考えたり
・自分で自分を罰したり
などの自虐的な言動を起こす可能性があります。
罪悪感に対処するためには、 罪悪感を持つできごとについて自身の責任の程度を考えることです。
この方法は一歩下がって出来事を客観的にみることができるようになるため、 責任を相応に分配できるようになります。
羨望(せんぼう)/嫉妬(しっと)
羨望(せんぼう)と嫉妬(しっと)は似ていますが意味合いが異なります。
羨望は
AさんとBさんの2者間における感情のことで、
Bさんの能力や容姿が、自分のそれより優れているとAさんがそれを望む感情のことです。
対して嫉妬は
3者間における感情のことで、
AさんがCさんに好意を持っていて
BさんとCさんの親密さなどがAに取って不快な場合に生じる感情になります。
その結果AさんはBさんに対して
・怒りを感じたり
・不安や抑うつ的な感情を持つこと
が嫉妬になります。
羨望や嫉妬を抱くことは別の不健康な感情につながります。
「彼女(彼氏)にフラれたらどうすればよいのか? 彼女(彼氏)がいないと生きていけない(不安)」
「彼女(彼氏)が他の人を好きになったらもう何もやる気が起きない(抑うつ)」
「私も頑張っていたのに、どうして彼女だけ上手くいったんだ?彼女に何か不幸なことが起こればいいのに!(怒り)」
羨望や嫉妬により
相手が持っている所有物やステータスや人間関係ばかりに関心が向き、
不安・抑うつ・怒りなどの別の感情を覚えてしまいます。
自身の持っている資質や環境を理解し、
自分のポジションを良くしようと努力するのが健全です。
だからこそ、
不安・抑うつ・怒りなどの感情との付き合い方を身に付ける必要があるのです。
1.3. 感情マネージメント(ABCのその先のDとE)
改めて当記事の目的ですが、
・(筆者であるとり天が)感情マネージメントについて勉強したことをまとめる
・(読者さんが)感情についての理解を深めるための手がかりやきっかけを与える
ことです。
「感情マネージメント」とは、
感情に行動や人生を振り回されるのではなく、感情を自分で管理・利用できるようになることです。
感情を管理・利用できるようになるには、
自身の感情の原因を探ることが重要であり、
そのためにはABC分析は有用です。
ABC分析は、
感情を生み出す原因を分析・特定するための手法です。
「雨が降っているから気分が沈む」を例にこのABC分析を考えました。
- A(Activating events:きっかけとなる出来事):雨が降っている
- B(Beliefs of thoughts:信念や思考):雨が降ると傘を持つのが面倒だ/雨の日は寒いから嫌だ
- C(emotional and behavioral Consequence:結果(感情、行動)):気分が沈む、憂鬱になる
Consequence:結果(感情、行動)の原因となる B(信念や思考)を突き止めることが感情の芽生えに影響していると理解することに役立ちます。
しかし、
ABC分析を用いてB(信念や思考)を変えないと出来事に対して芽生える感情は変化しません。
B(信念や思考)を変えるためには
・考えたことがいつも現実になるのか?
・考えたことが現実的なものか?
・その信念は目標達成、人生に役立つのか?それとも妨げになるか?
と「ツッコミ」を入れることが大事です。
つまり、自分の信念に
ツッコミを入れて、問いかけることで自分の考え方の正しさや妥当性を考え直すことができるのです。
この行為を
D(disputing:論駁(ろんばく))と言います。
D(disputing:論駁)によって
自分の信念や考え方に「ツッコミ」を入れ
・自分のためになる信念・考え方はあるのか?
・より良い人生にするにはどうしたら良いだろうか?
と前向きな思考に結びつきます。
「ツッコミ」を入れて
前向きな思考をすることで自分にとって効果性のある考え(E:effectiveness)を作り上げる段階につながります。
人生に対する効果性のある考え(E:effectiveness)を作り上げることで、
今までのB(雨の例で言うところの傘が面倒だや、寒いから嫌だ)を捨てて、
新しく前向きなB(信念や思考=雨は自然現象だから受け入れるしかない、温かい食べ物が味わえるようになるな など)を考えることができるようになります。
D(disputing:論駁)でツッコミを入れて E(effectiveness:効果性)を考えるんだね!
また
メンタリストのDaiGoさんも楽観性の放送の中で、マーティン・セリグマンさんが提唱している
ABCDE反論法というものを紹介しており、こちらも同じような考え方です。
- A:Adversity 逆境・困難(ネガティブな出来事)
- B:Belief 信念
- C:Consequence 結果(感情、行動)
- D:Disputation 論争
- E:Energization 活発化
(AとEの英単語だけが意味合いが異なります。)
Eの部分が「効果性のある考え」でなく「活発化」なので、
視点を変えて嫌だと感じることに新しい意味を見出してものごとを前向きに捉えるための手法だと言えます。
いずれにせよ、
私たちが思考するように私たちは感じてしまっているという前提があり、C(Consequence 結果)を変えるにはB(信念や思考)を変える必要があります。
C(Consequence 結果・感情)を
管理・利用する 感情マネージメントにはB(信念や思考)を変えることができるABCDE思考法は有用なスキルと言えます。
参考にした本
終わりに
いかがだったでしょうか。
感情を理解することで
みなさんが抱えている感情と向き合うこときっかけになったのであればとても嬉しいです。
ABC分析を使うことで、
あなたの感情の原因になっているB(信念や思考)に気付き、より前向きな感情に繋がるB(信念や思考)を見付けることができるようになるでしょう。
より理解を深めたいと考えている方は
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